試練

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甚平を着てウェイターをしていたのは、あの日彼女と一緒に居たあの男だった… 何故気がつかなかった? 一通りスタッフを見て彼女の姿を探していたのに。 あぁ、だからか。 彼女を探していたから、男には注目してなかったんだ… 「アキラっ。」 男に近付いて行く彼女。 名前で呼び合うんだ… 親しげに、作り笑顔さえしないくらい馴れた感じに。 「そろそろ出る?」 永遠と思えるくらい絶望の中二人の光景を見ていたが、時間にして一分足らずだったようで、声をかけてきたのは流だった。 ここに居ても辛い現実を目の当たりにするだけだ。 一刻でも早く、この場から立ち去りたかった。 まさに負け犬。
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