ヘタれ

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ドア横に立っている彼女の、すぐ近くの吊革があいていて、迷わずそこへ陣取った。 …まではいいが、果たして話しかけれる距離なのか? いや、距離というか、 雰囲気というか、 結局俺の度胸の問題!? そうこうしてるうちに、T中駅だよ… 俺のノミの心臓は、彼女が降りようとするのを見ていることしか出来なかった。 あ! 彼女はいつも通り本を見ていたのだが、 熱中していたのか駅到着に気づくのが遅れて、慌てて本をカバンに入れながらホームに降り立った。 降りる間際に、カバンから落ちたハンカチにも気づかずに。 瞬時、車内に落としていったハンカチを無意識に拾って、 T中駅に自分も降りていた。 「すみません!!」 すぐそこに見える改札口へ向かい5段ほどある階段を降りようとしていた後ろ姿の彼女に声をかけていた。 あんなに声をかけるのを躊躇っていたのに、理由が出来たからか自然と話しかけれていた。
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