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窓の外、視線の先のそれは。
濃いピンク色の花びらが枝からこぼれ落ちそうに咲き誇った、
花満開の並木道だった。
線路に沿って植えられたその花は、後に知ったが八重桜というらしい。
いわゆる“花見”の季節に見る桜はソメイヨシノが大多数を占めている。
それより遅咲きの八重桜は今まさに満開の時期を迎えていた。
線路沿いなのでトンネルにこそなってはいないが、しばらく続く桜道は隠れ花見名所のようで、花にたいして興味がない俺でも思わず見とれてしまっていた。
並木が終わると、本に戻る彼女。
並木が終わると、彼女に戻る俺。
朝一ダッシュの息切れは治まったはずなのに、心臓がドキドキしていた。
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