彩りの世界。

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彩りの世界。

日暮れのオレンジが紫に変わり 山の姿が夜空より黒くなった頃 シルクの糸のようにすり抜ける風 音を消した氷の粒を抱いたまま 空高く吸い込まれ 大地に横たわり 壮大な絵巻がまた1枚仕上がる。 ゆっくりと窓を伝う雨粒は 持ち場に還るように流れ続け サラサラと照らす陽射しは 隠し事を許さない凜とした佇まい 星が流れても流れなくても 瞬いても望めなくても 幾光年の歩みは瞳が捉えて 決して離さない。 悠久の時の中で 大地の奥深くでは 慈愛の熱をたぎらせ春を生み 潤す水は離れずに見守る 母なる月に委ね 恵みの雨は萌芽の美徳を。 慈しみ 尊び 敬い 偲び 美しい星が 青い星が 青く美しい星であるために。 目の前の光の粒に。
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