うたの歌。-遡る編-

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うたの歌。-遡る編-

滴る水の糸が 澄んだひたむきさを撫でる。 流れ着いたのか、 たどり着いたのか、 気高い胸ぐらで確かめ。 なけなしの美意識と 登り詰めた自意識と自負が またそこらじゅうを蹴散らかす。 生まれ落ちたルーツを指でたどり 自分を成すものの正体を探し 生き行く道をレーザーの如く またこれまでの調子で 歩き始める。 その胸には悔し涙を携え あるいは憎悪と炎を抱え あるいは清々しい緑を数え これまで風化されることも 侵食されることもなく 生粋の凛と張る1本の剣を備え。 ねえ、あなた。 私が言うのも野暮だけど。 あなた後ろ姿が変わったわ。 きっと私も変わったのね。 そうやってくるりくるりと回っていくのね。 ほら。この駒のように。 くるりくるりと。 人情と花火と草饅頭と。 今年の花火は綺麗。 綺麗過ぎて偽物みたい。 もう。どちらが本物でも偽物でもいいわ。 お勘定は払っておくから。 うたの歌 歌おうと 手を添えても 上の空と花火と。 簾ごしの光は真っ直ぐ走る色の帯。 もうよろしいでしょう。 もうよろしいでしょう。 涙はこのくらいにしておきたい。 あなたが戻る時には笑ってるわ。
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