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「ありがとう…」 「お前の存在を、全ての人間の記憶から消すが、いいか?」 「…いいよ」 「わかった」 わたしは自由になったんだ。 誰もわたしを知っている人はいないし。 これで、いいんだ。 「…怖くなったか?」 「なにが?」 「みんなが、お前を忘れること」 「…全然」 「そうか」 「せいせいする」 「お前は本当に素直じゃないんだな」 わたしは 泣いていた。 「泣くぐらいなら、はじめから素直になっていればいいのに」 「違う…っ。嬉し涙…だもん。寂しくなんか、ない」 嘘。 本当は寂しい。 みんながわたしを忘れるのが。 寂しくて堪らなかった。 「はぁ…戻るか?人間界に」 「…やだ」 「じゃあ、どうするんだ」 「ここに住むもん」 「いいのか、それで」 「…うん」
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