女川圭一郎が振り返る理由

8/18
前へ
/364ページ
次へ
「時田は変わったよ。なんというか、洗礼された感じ」 「そっかなぁ? スーツ着て化粧してるからじゃないの?」 「それが洗礼されたってことだろう?」 大学時代の時田は化粧っ気がなく、服装もカジュアルなものが多かった。 髪の長さや黒さは今も昔も同じだが、学生時代の何倍もするであろう美容室に行っているであろうことがわかるくらいヘアスタイルは綺麗に揃えられていた。 「綺麗になっててびっくりした?」 時田は人の気も知らないで、わざとおどけた口調で聞いてくる。 スーパーでの意表をつく再会の様子を下山田さんも興味津々の視線で見つめてきていた。 下山田さんと時田を交互に見ると二人はそれほど似ていなかったことに気付く。 洗礼されたとかそういった問題じゃなく、顔の作りからして下山田さんは時田にさほど似てはいなかった。
/364ページ

最初のコメントを投稿しよう!

128人が本棚に入れています
本棚に追加