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学校においては昼休みも教室などでは過ごさず、中庭で昼食を摂っていた。
あの一件以来、一ノ瀬さんがお節介を焼くことはおろか、話しかけてくることもなかった。
それは有り難いことでもあったが、気持ちのどこかで肩透かしを食らった気分にもなる。
「夏目君……」
弱々しく、しかし真剣な呼び声が聞こえ、僕は顔を上げた。
そこには申し訳なさそうな表情をした一ノ瀬さんが立っている。
「あの……こないだの掃除の件、ごめんなさい。私おせっかいですぐ余計なことをしてしまって……」
「ごめん。あまり誰とも話をしたくないから要件だけを言ってもらえないかな、一ノ瀬さん」
「……っ! いや、最近少しづつ夏目君が明るくなってきたなぁと思っていたのに。私が余計なことをしたために、また物静かになって……
それを謝りたくて……」
「僕は元々こうだよ。別に明るくなったり暗くなったりはしてない。
だいたい君達のような明るい人間はちょっと勘違いをしているよ。明るくあることが正しく、暗いことが間違っているような言い方をして。自分たちの理屈だけで暗い人間を哀れむんだ」
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