128人が本棚に入れています
本棚に追加
僕の噴出したような、それでいて淡々とした静かな、怒りに満ちた言葉に一ノ瀬さんはただ黙って俯く。
「そして暗い人間を見つけては馬鹿にするか哀れむ。正に余計なお世話だよ。明るいことが正しいわけではない。
暗い人間は君たちからすれば気味が悪いし、嘲笑の的なんだろうけど僕たち暗い人間からすれば君たちの方がよっぽど哀れだよ」
「哀れ……?」
「そうだよ。暗い人間というのは常に色々と考えているんだ。例えば僕は人間のいやらしさや汚らしさを嫌悪している。
それでも自分もそのいやらしく、汚らわしい人間であるしかない。それを苦悩しているんだ。
口を開けば他人の悪口だの批判だの言う。夢だの恋だのと欲望を綺麗な言葉に代えて語る」
「夢とか恋は欲望なんかじゃないよ……」
「ああしたい、こうしたいと思うことのどこが欲望じゃないと言うんだ!」
それまで冷静を保って小さい声で話していた僕だが、一ノ瀬さんの「きれいごと」を聞いて頭に血が上り、遂に怒鳴ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!