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怒鳴り声にびくんっと一ノ瀬さんは体を振るわせる。
いつもの気丈な一ノ瀬さんの気配はすっかり消え、俯いた瞳には涙が溜まっているようにも見えた。
……僕は最低だ。
一ノ瀬さんはただ僕のことをただ心配してくれているだけなのだ。
それを「なにか世間一般の常識」の代表者みたいに憎み、怒鳴りつけてしまったのだから。
後悔したが興奮していて謝りの言葉が出てこない。
僕は立ち上がり、逃げるように早足でその場を立ち去った。
臆病で卑怯で陰鬱で偏屈で頑固な僕は振り返って一ノ瀬さんの様子を見ることなど出来る訳がなかった。
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