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春日井さんは勤務時間前だったが既に着替えレジに立っていた。
俺は松葉杖を突きながら言い訳程度の小さなチョコ菓子をレジに置く。
「ごめん、春日井さん。あまりに気になってつい下山--」
「30円です」
「怒ってる? よね……悪気があっ--」
「30円です」
春日井さんは俺の方を見ようともせず30円を請求し続ける。
仕方なく俺は30円をレジに置き家路に着いた。
下山田さんに彼氏がいないことがわかり、晴れ晴れとした気分になるはずなのに俺はモヤモヤとした気持ちで胸が一杯だった。
その夜、チャイムがなり春日井さんが来てくれたと思った俺は杖も取らず這うように玄関に行き、扉を開けた。
這いつくばりながらやってきた俺を見て杉浦は目を丸くしていた。
その日以降春日井さんがやって来ることはなかった。
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