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「ひかり、貴志さんとは仲直りできたの?」
昼休みに下山田は春日井とお弁当を食べながら気にかかっていた話題を切り出す。
「仲直り? もともと直るほどの仲なんてないよ、あんな人と」
「またそんなこと言って。悪気があったわけじゃないんだから許してあげなよ」
春日井は眉間にしわを寄せてむっとした表情をする。
わかりやすい性格だなぁと下山田は内心くすりと笑う。
ボーリング場の一件以来、春日井が頻繁に貴志のアパートへ見舞いに行っていることを下山田は春日井から聞いていた。
1人で行くのも大変だろうし、そもそも若い女性が男の部屋に1人で行くのも考えものなので自分もついていこうかと下山田は提案したが、春日井に却下されていた。
あんな病原菌がうようよしているようなところ裕子が来ちゃ駄目、というのが春日井の言い分だ。
昼休みになると春日井は貴志の愚痴のような、のろけのような、何ともつかない話をしょっちゅう下山田にしていた。
その話を聞くたびに下山田は春日井が貴志に恋をし始めているんだなと感じていた。
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