女川圭一郎が脇役であることに自ら気付いた理由

2/15
前へ
/364ページ
次へ
「街の案内」という名目の下に俺と時田はたまに会ってはショッピングや観光地に足を運んでいた。 街の案内などというていのいい言い訳を使いながら俺は時田に近づき、時田はデートではないと抑えている様子であった。 つまりはお互いに「街の案内」という便利な言葉に頼っていた。 あやふやな関係で過ごしている時間は心地もいいが、何か不安定さも感じる。 俺にとってそれは例えるならば自己採点で合格点を取っているが合格発表がまだ来ていないような不安定さだった。 実は時田にとってもこの関係は心地いいものの不安定さを感じるものであった。 ただしそれは俺のような浮わついた感覚ではなく、虫歯は痛いが鎮痛剤で痛みをごまかしているような不安定さだったのだが、それを俺が知るのはもう少しだけあとになる。
/364ページ

最初のコメントを投稿しよう!

128人が本棚に入れています
本棚に追加