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しかし時田は俺の無言を話を促す沈黙と受け取ったのか、聞きたくもないのに時田は大学を卒業してからの倉持とのすれ違いを話す。
なるべく上の空で聞こうと心掛けるが、どうしても次第に聞き入ってしまう自分がいる。
時田はなんでもないことのように卒業してからは電話代も馬鹿にならないからメールばかりでやり取りをしていた経緯を話す。
時田は遠い昔を懐かしむ程度の口振りで、月に一回会う約束が二ヶ月に一回、三ヶ月に一回と減っていったことを話す。
そんな感じで時田は遠い昔の、とっくに終わった恋の話のように語る。
でもその声の微かな震えかたや、少しだけ潤む目を見れば嫌でも分かってしまう。
時田の中ではまだ何にも解決していないこととして残っていることが。
だって俺はずっと時田ばかりを見てきていたのだから。
時田の気持ちなど手に取るように分かる。
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