女川圭一郎が脇役であることに自ら気付いた理由

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俺は黙って立ち上がるとさっさと歩き出す。 「ど、どうしたの? 時田君……」 「行くんだよ」 「どこに?」 「倉持のところに決まってるだろう? 新幹線なら一時間もかからない場所だ。すぐだよ」 俺を止めようと必死になって「もういいんだよ」とか「ふっきれたから」とか言い訳をする時田だったが結局俺と一緒に新幹線に乗った。 俺はこんなことしたいわけではなかった。 時田が倉持と別れ、こうして俺と再会して頻繁に会っている。 俺にとっては絶好のチャンスではないか。 何故俺は新幹線にまで乗って倉持のところへ、時田と寄りを戻すように言いに行かなくてはならないのか? 普段の俺ならこうして女のために必死になれば、女から好感を持たれるという打算で動くかもしれない。 しかし今の俺にはそんな打算はない。
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