128人が本棚に入れています
本棚に追加
かといって笑いながら泣いている時田が不憫だと思いやっているわけでもない。
時田の心の中の倉持を完全に終わらせなければ、これ以上進展は望めないと思っての行為、というのが一番しっくり来る気がした。
自分の行為ながら自分自身でもよく判断がつかないのだが、いえばまあ、そういった感じだ。
倉持は時田と自然消滅したあとに引っ越しをしていた。
新幹線を降りて年賀状に書いてあった住所をネットで調べるという、友人宅を訪ねるにはいささかおぼつかない方法で俺たちが倉持の住むアパートに到着した時は既に夕方遅くであった。
「やっぱりいいよ、女川君。いろいろしてくれてありがとう。嬉しかった。
でももう終わったことだし、私の中では整理もついてるの。このまま帰りましょう」
ほとんど泣きそうな表情になって俺の袖を引っ張る時田に俺は「大丈夫だから」と小さく、しかし力強く声を掛け、倉持の部屋のインターフォンを押した。
最初のコメントを投稿しよう!