女川圭一郎が脇役であることに自ら気付いた理由

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さすがに倉持の現在の「彼女さん」を目の前にして我々がやってきた理由を話すのもはばかられた為、俺と時田と倉持の3人で近くの公園へと場所を移した。 倉持の彼女は全てを察したのか、それとも何か勘違いをしたのか分からないが「いってらっしゃい。遅くならないでね」とだけ言って、倉持を送り出してくれた。 「お前たち大学時代に3年も付き合ったんだろう? いくらなんでも別れる時くらいフェードアウトというのはないんじゃないのか?」 俺は倉持に努めて明るい口調で言った。 しかし倉持も時田も俯いたまま言葉を発しない。 その状況になってようやく俺は気付いた。 この場に俺は邪魔なんだと。 なにがしかの主人公にでもなったような勢いで時田を引っ張り出して倉持に再会させたが、もしこの状況が映画や小説なら俺は完全に脇役だ。 元彼氏と元彼女がすれ違いの末に別れ、時が経って再開したシーンで、その再開をさせるために奔走した友人が主役になるはずがない。 主役同士が再開を果たしたのだから脇役はさっと場面から退場しなくてはならない。 したり顔で元彼氏に「フェードアウトがどうした」などとお説教する場面ではなかったのだ。 読者が見たいのはそんなお節介野郎のお説教ではない。
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