夏目宏市に専属絵師がついた理由

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とはいえ僕は相変わらず学校では一ノ瀬さんとも下山田さんともあまり話はしない。 一ノ瀬さんに元気になれたのは僕のお陰だろみたいな態度をとったりはしない。 そもそも僕は特に何もしていない。 そのあたりは充分にわきまえている。 僕は今まで通り1人で小説の下書きやプロットなどをノートに書き綴っていた。 たまに書いてる振りして下山田さんを盗み見て、人物描写に現実感を与えていく。 これは小説のためである。 やましいことではない。 もっとも本人に許可もとらず小説の主人公にするのは充分にやましいことかもしれないが。 たまに僕が見ているときに彼女が振り返り目が合ってしまう時もあった。 目が合うと彼女はいつも優しく微笑んでくれる。 それだけで僕の鼓動がまわりに聞こえてしまうのではないかと思うくらいに高鳴った。
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