貴志晃将が動き出した理由

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ある日のバイト終了後。 春日井さんが休みで俺と下山田さんの二人きりになった。 「下山田さんお疲れ様」 「お疲れ様でした」 「ちょっと聞きたいんだけどさ」 「なんでしょうか?」 下山田さんは相変わらずの柔らかい笑みを浮かべる。 以前の俺であればこの笑顔だけで悶絶ものであった。 「春日井さんの好きなものってなんだか知ってる?」 「……えっ?」 「いやさぁ、骨折したときあれこれと世話になったし、なんかお礼したいなって」 「……さぁ?……私はひかりの好きなものとか、あんまりわからないです……」 先ほどまでの柔らかい笑みは嘘のように消え、ぎこちない笑みに変わっていた。 「そ、そうなんだ……意外だね」 「すいません。お役にたてなくて」
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