女川圭一郎の打算が惨めな理由

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恋愛の相談とは心をさらけ出すものだ。 ありのままの苦悩や喜びを吐き出すように語る。 俺はそれらの言葉を聞いて下山田さんの心の葛藤や動きを察知する。 時には相手が求める答えを、時には叱咤を、行き過ぎるときはなだめる。 そうして心を許した関係になれば自然に気持ちは傾き始めるものだ。 違う人が好きで恋愛相談をしているうちに相談相手が好きになってしまう、というのはよく聞く話だ。 ドラマにすらなるくらいポピュラーな話だ。 確かに今、下山田さんの心に俺はいない。 しかし落胆するのはまだ早い。 いつだって俺は感情に流されない恋愛をしてきた。 それは悪く言えば計算高い恋愛だったと言える。 しかしそれらの打算的な行為は今回の為の練習だったんだ。 経験不足で未熟ならここでヤケを起こして自滅する。 ピンチはチャンスだ。 俺は座右の銘のようにそう呟いてメールを打ち直す。
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