貴志晃将がバイトを頑張る1つの理由

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高校生ともなれば自分の顔をキャンバスかなにかのように化粧を塗りたくりたがるものだが下山田さんにはそんな気配はまったくない。 薄いファンデーションの下地化粧くらいはたまにしているようだがしているときとしていないときの差がわからないくらい薄いし、そもそも肌が真っ白で綺麗だ。 口はやや大きく、唇は薄くほんのりと紅い。 口紅の紅さではない自然な紅だ。 地味ではあるが慎ましい美しさを持つ下山田裕子。 名前からして慎ましい。 電車で30分ほどいったところにある高校に通う二年生である。 先週からバイトに入ったこの下山田さんに俺は夢中だった。 「すいません通してください」 俺が下山田さんに見とれていると不機嫌そうな高校生くらいの男が大根を2本抱え、俺を邪魔そうに見下ろしてくる。 「失礼しました」 俺が素早く道を開けるとその高校生は礼も言わず通る。 最近の高校生は生意気だ。 最近まで高校生だった俺は憤る。
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