女川圭一郎が焦った理由

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焦りは禁物。 そういい聞かせて俺はかごをレジに置く。 「お帰りなさい」 っっ焦った! いきなり下山田さんにお帰りなさいと挨拶されたのだ。そりゃ焦る。 焦りは禁物なんて次元じゃないだろう! 下山田さんは少し照れたような顔をしてカゴから商品を出してバーコードを通す。 「た、……ただいま」 俺がそう返すと下山田さんはにこりと笑顔を返す。 チークを強めに塗ったかのように赤い頬。 自分の胸がかなり速く鼓動を打ってるのがわかる。 何やってんだ、俺。 相手は高校生だぞ。 俺が翻弄されてどうするんだ。 何かあと一言言葉を交わしたかったが、あいにく今はピークタイムで俺の後ろで待ってるおばさんもいる。 忙しいところを邪魔するようではまだまだ甘い。 俺は軽く会釈してレジから去る。 俺がスーパーを出てから10年振りにスキップをしたのは内緒の話。
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