下山田裕子がモテ期到来に気づかない理由

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「今日もよく働きましたっと!」 春日井ひかりが伸びをしながら声をあげる。 「お疲れ、ひかり」 下山田裕子も着替えが終わり帰宅の準備が整う。 今日は閉店まで働いたから既に時刻は22時30分だ。 「お疲れ様!下山田さん!春日井さん!」 帰る間際の二人を待ち伏せていたかのように貴志が声をかける。 貴志は下山田らのバイトの先輩で映画好きな大学生だ。 「これからカラオケでも行かない?」 「行きません!お気楽な大学生と違い私らは明日も朝早いんです!」 一瞬の間もおかず春日井が却下する。 「行こう!裕子!」 「う、うん。それじゃお休みなさい、貴志さん」 逃げるように2人はスーパーを後にする。 「キモい!マジキモいよ!貴志晃将!」 「そんなこと言ったら失礼だよ、ひかり」 「ダメだよ、裕子。そんな風にあんな奴庇っちゃ! 付け上がるんだから」 「庇ってるんじゃないよ。でもいきなり悪口言うのはよくないと思う」 「ああいう奴は手当たり次第に女に声かけまくってるの。 隙を見せたら気があるとか思われて付きまとわれるよ。現にちょっと裕子に馴れ馴れしいじゃん、あいつ」 「……」 そう言われたら下山田も反論出来ない。
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