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「で?」
「ん?
でって何?浅倉っち」
突然向けられた質問に、眉をあげて首を傾げると不機嫌な顔の浅倉が眼鏡を中指で押し上げて俺を睨んだ。
「なんでわざわざ俺の隣に来るんだ。
離れて座ってくれないか?」
言いながらフランス語の教科書を手に取り、立ち上がる。
「まあまあ、いいじゃん。友達でしょ?」
むんずと裾を捕まえ、ニコニコと笑いかける俺を胡散臭げに見下ろして、浅倉はちらっと後ろを振り返った。
「友達かどうかは置いといて、せめてこのギャラリーをどうにかしてくれ」
階段式に机が並ぶ、大学の講義室には、あちこちに空席が目立っていが、なぜか俺達の周りだけはやけに人口密度が高い。
きゃぴきゃぴとはしゃぐ女の子の集団がスクラムを組むように、浅倉の行く手を阻んでいた。
「やーん。やっぱり二人並ぶと絵になるわー」
「ねぇ、写メとっていい?」
「あ!私浅倉君のアドレスしりたああい」
やけにテンションの高い女子大生の集団に押されるように、浅倉は再度、元の椅子に腰を落とした。
そのまま頬杖を付き、むっつりと黙り込んでいる。
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