下弦の月

2/2
1768人が本棚に入れています
本棚に追加
/369ページ
夜の風が洗い立ての髪を揺らしていく。 やけに高く響く虫の声を聞きながら 俺はベランダの手摺りに肘を付き、煙草の煙を吐き出した。 空に浮かんだ月は三日月。 下弦の月だ。 冴えた光は、なぜか真由を連想させる。 冷厳で、美しく 悲しいくらいに はかなく、脆い。 弱々しい光が、たなびく薄雲に覆われていく。 藍色の闇に包まれながら、俺はそっと目を閉じた。 今も 瞼の裏に 真由の最後の涙が、ちらついて離れない。 ねぇ真由 キミは 今、幸せ? .
/369ページ

最初のコメントを投稿しよう!