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夜の風が洗い立ての髪を揺らしていく。
やけに高く響く虫の声を聞きながら
俺はベランダの手摺りに肘を付き、煙草の煙を吐き出した。
空に浮かんだ月は三日月。
下弦の月だ。
冴えた光は、なぜか真由を連想させる。
冷厳で、美しく
悲しいくらいに
はかなく、脆い。
弱々しい光が、たなびく薄雲に覆われていく。
藍色の闇に包まれながら、俺はそっと目を閉じた。
今も
瞼の裏に
真由の最後の涙が、ちらついて離れない。
ねぇ真由
キミは
今、幸せ?
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