おまけ リクエスト「幸せダブルデート」

5/23
前へ
/369ページ
次へ
真由side 「ってことでさ。 イタリアはやめて、国内にしたから!」 旅行雑誌を手にした一樹が、ニコニコ笑いながら小首を傾げる。 「…………」 日曜の午後。 お気に入りのソファーに座り、雑誌を読んでいた私は、そんな彼を横目に見て溜め息を吐いた。 一樹が旅行に行きたいと言い出したのは先週のこと。 ゴールデンウィークを利用しての4泊5日のイタリアの旅行。 恐らく前々から企画していたのかもしれないけど。 「ごめんなさい。ゴールデンウィークの最後の2日間はお母様とブランドの新作発表会に行く約束をしているの」 母との約束を違えることは出来なくて、私はあっさりと一樹を切り捨てた。 一樹には悪いけど、母は最優先なのだから仕方がない。 不満げな彼に罪悪感を感じながらも、予定変更は出来ないから、見て見ぬふりで放置していたのだけれど。 「浅倉っちも佐和ちゃんも誘ったし、チケットも手配したよ。 真由ももちろん大丈夫だよね?」 「…………」 …………結果、蓮と佐和さんも巻き込まれた、と…。 外堀から固めていくやり方は、実に策士の一樹らしいと思う。 「温泉旅館にしたから。 内風呂も檜だよ。真由温泉好きでしょ?」 「………」 嬉しそうに笑う彼に、もう一度溜め息をもらす。 本当はサークルの集まりがあるんだけど、………仕方ないわ。それは断ろう。 2泊なら、母との約束には響かないし。 「…………楽しみね」 ふっと小さく笑う。 一樹は満足そうな笑顔を浮かべて、私のこめかみにキスをした。 .
/369ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1788人が本棚に入れています
本棚に追加