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一樹side
「 すごーい。
国内なのにオランダにいる気分!
蓮くん見て見て、運河にアヒルがいるよ!」
旅行一日目。
訪れたのは古き良きヨーロッパの街並みを再現した、九州のテーマパークだ。
レンガ作りの建物が立ち並ぶ、石畳の道を、はしゃぎながら歩く佐和ミコトと、それを締まりのない顔で見つめる、浅倉蓮。
その後ろを真由と並んで歩きながら、俺は二人にしらけた視線を向けた。
「ミコ。 あれはアヒルじゃなくて白鳥だよ」
どえらい笑顔だな。浅倉。
何て言うか、ツッコミが、生暖かい。
普段の浅倉なら
「あれがアヒルに見えるわけ?今すぐ眼鏡かけてきたら?」
と、冷たい視線を向けるくらいの反応しか示さないはずだ。
あいつ、本当に佐和ちゃんにベタ甘だな。なんだか感心する。
「蓮くん蓮くん!
あのお土産やさん、可愛い!
ママたちに買って帰ろう!」
「ミコ。
荷物になるから、お土産は帰りにしようね」
「蓮くん!
カナルクルーザー乗りたいね!
ここから乗るのかな」
「ミコ。
そこから乗ると逆だから。
元来た場所に戻るよ?」
「蓮くん蓮くん!見て!」
「ミコッそこ段差!」
「きゃあっ!」
がっしり佐和ミコトの腕を支えて、ほっとしたように息を吐く浅倉と
「あ、あれ可愛い!」
頓着せず、新たなターゲットに目を輝かせる佐和ミコト。
「……………………」
….....マジ感心するわ。浅倉。
なんつうか。
…………… 佐和ちゃん最強ー。
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