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ミコトside
高校時代、時田くんと吉仲先輩が一緒にいるところを見たことがなかったから。
二人はどんな感じでお付きあいしてるのかなって、ちょっと気になったりしてたけど。
二人の関係性を一言で例えるなら、『執事とお嬢様』だと思う。
「一樹………」
「真由、喉乾いた?
そこのカフェ入ろうか?」
「一樹…」
「あ、ちょっと疲れたよね?
ベンチがあるから座ろう」
時田くんはとにかく、吉仲先輩の一挙一動に注意を払っている。
喉が乾いていそうなら飲み物を差し出し、疲れていそうなら椅子を勧める。
興味を持っていそうなところは敏感に察知し先回り、彼女が欲しいものはあっという間に購入済み。
昔の時田くんは、自由気ままで、自己中心で、あんまり他人に興味を持ってなかったから、なんだか意外で新鮮な感じだ。
「ね。蓮くん。
時田くんって、意外と尽くすタイプだったんだね?」
隣を歩く蓮くんに耳打ちする。
「ああ。うん。でも、そろそろ、真由がキレるかな」
二人を振り返り、呆れ顔でボソッと呟いた蓮くんの言葉に首を傾げた。
キレる?どうして?
蓮くんにならって振り返ると、パンフレットを見る吉仲先輩に、寄り添う、時田くんの姿が目に入った。
「……一樹……」
「真由、美術館なら直ぐだよ。
終わったら、すぐ近くのレストランがあるからここで食事して………」
ニコニコと地図を指差す時田くん。
それに小さくうなずいて、
「じゃあ少し、別行動しましょう。美術館は一人で行くわ。
一時間後にレストランで」
スタスタと歩き去る吉仲先輩。
その後ろ姿を、置いていかれた子犬みたいに見送る時田くん。
あ、本当だ。どうしてだろう?
吉仲先輩、少し怒ってる?
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