おまけ リクエスト「幸せダブルデート」

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蓮side 部屋に着いた途端、タブレットで株価をチェックし出した時田を睨みながら、空調を整え、アメニティを確認し、お茶を入れる。 湯飲に蓋をし茶托に載せて、お茶請けと一緒に時田の側に置いてから、ハッと我に返った。 …………俺はどうして、こんな奴に甲斐甲斐しく茶なんか入れてやっているんだろう? 俺は嫁かっ!と自分に突っ込みをいれて、かえって激しく落ち込んだ。 なんかイヤだ。今すぐ帰りたい。 「よし、1億もうけた」 とんでもないことをポツリと呟いて、時田がタブレットを片付け顔をあげる。 「………あれ?浅倉っち、何でそんなに落ち込んでるの?」 不思議そうに首を傾げる時田にイラッとしながら顔をそらすと、ヤツはクスリと笑いを漏らした。 「えー何?もしかしてまだ佐和ちゃんと同室になれなくて拗ねてるの?」 「別に。俺はお前と一緒にいたくないだけだ」 「何それ。ひどくなーい?」 抗議の声をあげる時田にため息を漏らす。 「真由とミコトは人見知りだから、二人きりは気まずいだろ?真由だって、お前と一緒の方が良かったんじゃないか?」 俺の言葉に時田は、笑顔を消して机に突っ伏した。 「俺と真由が一緒だといろいろマズいんだよ」 「マズいって何が?」 「二人きりだと理性がもたない」 「は?」 時田の言葉に眉を寄せる。 「お前、真由と暮らしてるんだろ?何を今更…………」 言いかけた俺を遮るように、時田が机を叩いて起き上がった。 「バカだな浅倉っち。平常とは訳が違うんだよ。 浴衣に濡れ髪だよ?浴衣に濡れ髪!そんなん耐えられるわけないだろう!?」 当然のように主張する時田に、バカはお前だと心の中で呟きながらも、俺は黙ってやり過ごした。 先月、真由とカフェで話したとき、彼女が寂しげに言っていた言葉を思い出したから。 『一樹は、あれから私に必要以上には触れないのよ』 高校時代、真由は時田の子供を流産している。時田はその時の罪悪感を強く抱いたままなのだ。 だから、真由に触れない。彼女を傷つけないために………多分、もう二度と。 それが正解か否かは分からない。でも。 倫理、道徳、背徳、贖罪。 彼らを縛るものは、この世に溢れていて。幸せになるのはひどく難しいから。 「………分かった。我慢してやるよ」 ボソッと呟いて、ため息を吐いた。 不本意だけど仕方ない。明後日までの辛抱だ。
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