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ミコトside
博多駅構内で入ったカフェは、白を基調とした可愛い内装で、女性客がほとんどだった。
入った途端、ざわりと店内がざわめきたつ。
高校生やOL風の女性、子連れの主婦の方に至るまで、みんな頬を染めてチラチラこっちを見ている。
(無理もないよね)
時田くんと蓮くんは一人でいてもすごく目立つのに、二人揃うとなんだかさらに迫力がある。
さらに吉仲先輩も美人だから、その相乗効果たるや、半端ない。
「もしかして、芸能人かモデルかな?」
こそこそ囁き合う声に、何となくいたたまれない気持ちになりながら、時田くんが予約してくれたVIPルームに入り腰をおろした。
VIPルームはピンクを基調としたお姫様部屋で。配置された小物も可愛いし、メニューのスイーツも可愛くて。
「可愛いー」
思わず声に出してそう言うと、なぜか3人とも私を見て、うなずき合った。
「やっぱ、佐和ちゃんにピッタリだよね。ここ」
「そうね。思った通りだわ」
時田くんと吉仲先輩がクスクス笑い合う。
きょとんと首を傾げていると、蓮くんが笑いながら私の頭をなでて、説明してくれた。
「ミコのために予約してくれたんだって。ミコが好きそうな部屋だから」
「いや。むしろ、ここに座る佐和ちゃんを俺が見たかったんだよねー。可愛いものに囲まれている佐和ちゃんって和むよねー。ずっと見てたい」
ニコニコと頬杖をつく時田くんの前に
「………見るな」
蓮くんがメニューをかざす。
「浅倉っち、ヤキモチ超うざー」
「うざいのはお前だ。帰るまで目を閉じてろ」
「閉じてたら食べれないじゃん。
浅倉っちが「あーん」で食べさせてくれんならいいけど?」
「絶対、嫌だ!気持ち悪いっ」
旅館での眼鏡禁止の一件が尾を引いているのか、再びもめ始めた二人に
「…本当バカね」
吉仲先輩は冷たい一言をなげつけて、我関せずとばかりにメニューを広げた。
さらりとこぼれる綺麗な黒髪。透明な肌。色気のある赤い唇。
綺麗だな…。
羨ましくて、ぼぅと見つめていると、私の視線に気づいてか、吉仲先輩が顔をあげて私を見た。
「佐和さんって、」
小さく吉仲先輩が目を細める。
「本当可愛いわね。……ちょっと妬ましいくらい」
「え?」
言葉の意味が理解できなくて、首を傾げる。
吉仲先輩はハッとしたように口を押さえると
「………なんでもないわ」
なぜか自嘲気味に笑って、首を横にふった。
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