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渡辺くんside
浅倉くんストーカーの旅から一転、ワンピー○満喫の旅に付き合わされた僕は、恥辱にまみれた二日間を終えようとしていた。
なんだか配色が派手なハウステン○ス号に乗り、一路終点博多駅へ。
ここから地下鉄に乗り換えれば五分程度で福岡空港に到着だ。
「教授、地下鉄乗場に降りますよ」
お疲れなのか、帰りたくないのか。
ダラダラついていらっしゃる教授に声をかけ、少し距離を取りながら地下鉄へ急ぐ。
ああ、もうすぐ帰れるなとホッとしたたのもつかの間、博多駅構内でマズいものを目撃した。
人混みの中でも目立つ、背の高い浅倉くんと時田くん。
その後ろには綺麗系と可愛い系の女子二人立っている。
(ちなみに僕は綺麗系がタイプだが、可愛い系もストライクゾーンだ。)
そして、明らかに何かもめている様子で彼らの前に立つ、ガラの悪い男三人…………。
「よし」
…………見なかったことにしよう。
足を運ぶ方向を斜め45度に向け、さりげなく通りすぎることとする。
サクサク歩きながら、教授はきちんと着いてきていらっしゃるだろうかと気になって振り返ると、彼は運悪く浅倉くんたちを見つけてしまわれたようで、ピタリと立ち止まっておられた。
「……あれは……」
頭に麦わら帽子を被り、相変わらずチョッ○ーのスーベニアバスケットをぶら下げた、ふざけたオッサンの目がキラキラ輝く。
マズイ!
そう思った時には、空気を読めない43歳は、
「浅倉くーん!」
と、大声を出して彼らに駆け寄って行った。
「教授!」
あ、あの野郎…………いや…あの方。本当はバカなんじゃないだろうか?
手を伸ばしたまま、唖然と、ご機嫌な43歳の背中を見送る。
あの緊迫した空気にどう入っていくおつもりなのか?
大体、ストーカーしている対象に駆け寄ること事態、非常識なんじゃ……いやそれ以前にストーカーが非常識なのか?
「…………」
まあ、高倉教授に、常識なんてあってないようなものだよな…………。
むしろ非常識こそが教授の個性だ。
「仕方ない。ここは見守ろう」
とりあえず、面倒くさいことは避けたいので、僕は柱の影に隠れて生暖かく教授を見守ることにした。
まあ、何かあれば浅倉くんたちが解決してくれるだろうし。
飛行機の時間も差し迫っているわけじゃない。
ポケットからスマホを取りだしタップする。
暇だから、なめこでも育ててようっと。
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