おまけ リクエスト「幸せダブルデート」

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真由side 帰りの飛行機に無事乗り込み、離陸を待つ。 飛行機の窓の外は少し薄暗い。 家に辿り着く頃には真っ暗になっているだろう。 「真由、寒くない?」 クーラーが苦手な私を気遣って、一樹がジャケットを差し出してくる。 肩にかけながら、一樹の視線が私の腕にあることに気づいて首を傾げた。 「なに?」 「……いや。さっき乱暴に腕を握られてなかったか………ちょっと気になってさ」 「……………」 私と佐和さんに声をかけてきた男の人達のことか。 捕まれたと言ってもほんの僅かで、直ぐに一樹が払ってくれたし。 彼らは結局、一樹と蓮が通う大学教授の出現ですぐに姿を消したから、大して実害はなかった。 まあ、彼らが逃げ出したのは、その前に一樹が脅したせいもあるんだろうけど。 「別に平気よ。一樹ももう高校生じゃないんだから、あのくらいで喧嘩なんてやめなさい」 一樹が私のために怒ってくれたのは、単純に嬉しい。 ただ、彼が私のために自分を犠牲にするのは、耐えられない。 「分かってるよ。ガキみたいに熱くなったのは反省してる」 気まずげに苦笑いして、そう言ったあと、一樹は髪をかきあげて、大きなため息を吐き出した。 「あーあ。旅行ももう終わりかー。真由は明日から泊まりだっけ」 「あなたは明日の予定あるの?」 詮索してると思われたくなくて、何気なさを装いながら尋ねると、一樹は首をひねって頭をかいた。 「うーん。明日は料理サークルの子達に、日帰り旅行さそわれてるんだよね」 「………へぇ」 「真由がヤキモチ妬いてくれるならいかないけどね」 ヘラりと笑う一樹を無視して、本を取り出し、しおりから開く。 「ちぇ。妬くわけないかー。なんだか俺、一方通行の片思いだな」 つまならそうな一樹を横目に、読んでもいない本のページをめくった。 ………ヤキモチなら妬いている。 今も、駅のカフェでも。 佐和さんを可愛いと手放しで誉めるから、少し彼女に意地悪なことを言って自己嫌悪した。 「…………」 一樹は私を好きだと言う。 私は彼を好きだとは言わない。 でも言わないからこそ。 抱く思いは、私の方が強いのだと思う。 (行かないで) そんなこと言えないけど。 いつか、離れて会えなくなっても。 私は死ぬまで彼を思い続けるのだろう。 私達の未来が、どんな風に転がったとしても。
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