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ミコトside
「蓮くんの大学の教授って、少し変わってるね。あの後、すぐいなくなっちゃったし、結局何の用だったんだろう?」
「…………さあ?でも、高倉教授は語学も堪能で、いくつもの実績を残してる、かなりの知識人なんだよ。
もしかしたら、あの場の空気をよんで、俺たちを助けてくれようと奇抜な服装で駆けつけてくれたのかもね」
「………そっかぁ………なるほど………」
帰りの新幹線の中、蓮くんと並んで座る。
お菓子やジュースを買い込んだけれど、旅の疲れからかすごく眠くて。
うつらうつらなりながらも、眠らないように目をこすり、重い目蓋をこじ開けた。
「ミコ。到着するまで寝てたら?
ちゃんと起こしてあげるからさ」
苦笑している蓮くんに首を横に振ってみせる。
「………ダメ。……寝たくない」
「どうして?」
優しい蓮くんの声に心地よくなりながら、引き寄せられるままに肩に寄りかかった。
「………だって………蓮くんとたくさん話………したいの。……今日が終わったら………また、会えなく……なるんでしょう?」
ずっと側にいたい。
でもそれは、叶わないから。
少しでも話していたい。寂しくなった時の分を埋めるくらいに。
「ミコ。明日と明後日。何かある?」
「…ん?……特には……ないけど………」
「………このまま……俺の住んでる部屋に連れていってもいいかな?」
「………え…」
蓮くんの言葉にぱちぱちと目をしばたかせる。
「………でも、蓮くん……寮だし」
「うん。寮は先週出たんだ。
家賃が払えなくて困ってたクラスメイトとチェンジして、今はアパートに住んでる」
「……………知らなかった…」
意外な事実に驚く私に、蓮くんは少し笑って答えた。
「まあ、急だったからね。父さんにも先日話したくらいで……」
「…………蓮くん………」
「ん?」
ふわふわとした意識の中、ぎゅうっと彼の腕に抱きつく。
「明日も…明後日も………一緒にいれるの?」
甘えるように聞くと、蓮くんは優しい笑顔で頷いてくれた。
「うん。だから、今は寝てていいよ」
そっと髪を撫でられて、急速に眠りに落ちていく。
「………おやすみ、ミコ」
暖かな蓮くんのぬくもりを感じながら、私は幸せいっぱいで意識を手放した。
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