砂の城

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俺と真由は血の繋がった姉弟だ。 両親の離婚で一度離れ離れになったが、 三年前、互いの学校に近いマンションを借り二人で暮らし始めた。 俺はずっと彼女が好きだった。 姉としてではなく、女として。 でもそれはずっと一方通行で。 永遠に実ることはないのだと思っていた。 それでも諦め切れなくて。 強すぎる愛情は苛立ちに変わり、俺は彼女の身体も心も苦しめた。 追い詰められた真由は胎内に芽生えた命を道連れに死を選択しようとした。 何とか一命は取り留めたものの、胎児を一人で逝かせた罪に彼女は傷ついていて。 これ以上側にいても苦しめるだけだと、俺は彼女から離れることを決意した。 ……―でも。 『行かないで、一樹! 好き。好きなの!』 16歳の俺は、あの時、全てを手に入れた気がしていた。 努力さえすれば、真由を幸せにしてやれるのだと、馬鹿みたいに信じ込んでいた。 でも、現実は そんなに簡単ではなくて。
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