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最初に見たのは…とても重い灰色の空だった。
気付いた時には俺はここにいて、ここに立っていたことは確かだ。
なぜかは知らんが…。
(ここは…どこだろうか…?)
声を出そうと思ったが、喉がへばりつくように渇いていて、声が出せない。
唾液も出ないことには相当俺は喉が渇いているのだろう。
(ん…? 向こうからなにか音が…?)
どうやらここは静かな場所らしいな。
そのため、一つの物音が大きく聴こえるように、向こうの丘からなにやら人の話し声が聴こえる。
別段、目的地があるわけでもないので、行ってみることにしよう。
もしかしたら水をわけてもらえるかも知れない。
(……おっ? 人だ、良かった。)
丘を越えると、そこにはキャラバンなのか大きな荷台と立派な毛並みの馬がいて、二人の商人らしき人が休憩をとっていた。
それに、美味しそうな匂いがするところをみると、昼食中だったのかも知れない。
(案外ついてるのかもな…。)
俺は喉の渇きを癒すために商人達に近寄って行く。
声が出ないのでジェスチャーとかで伝えるしかないな。
すると、商人の一人が俺に気付いたのか、何かを言いながら俺に向かって指をさしてきた。
「おい、客が来るぞ。」
「バカ。客なもんか、あらかた喰うもんが無くなって、おこぼれでも貰いに来たんだろう。」
「そうか。でも…なんかおかしくないか?」
「………オイ、まさか“反対派”か!?」
いったいこの二人は何の話しをしているのだろうか…?
いや、それよりも早く喉の渇きを潤したい。
やっぱり、睨んだ通りか昼食中だったのか美味そうで大きな肉が二つもある。
少し分けてもらおう。
「く、来るな!」
「くそっ! 街帰りだから武器も何もねぇぞ!」
「や、止めろ! 来るな! 俺はまだ死にたくねぇ!」
いやはや、悪いね。
こんな見ず知らずの男にこんなにわけてもらっちゃってよ。
「に、逃げろォ!」
「お、オイ! 置いていくな! 腰が抜けて動けねぇんだ!」
んじゃまぁ…とりあえず──
「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
───いただきます。
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