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草木の青々と茂る大地、その所々に巨木が無数に生え、伸びた枝の葉が空を覆い隠す
何重にも重なる葉のせいで、日の光の通り道は無い
その巨木の一つに寄りかかっている者がいた
歳は20代前半、髪は銀色で、右の額から左の頬に一筋の切り傷がある 王宮の鎧を着て、鋼色の剣を抱くように寝ている その青年の切り傷に木の葉が一枚ハラリと落ちてきた
その瞬間、青年の両目がカッと開き、素早く剣の柄を握る
青年の澄んだ藍色の眼から力が抜け、剣を握る手からも力が抜けた
またか…とつぶやきながら、自分が10年前の出来事の夢をみていたということに気付き、ふぅっ…と小さく息を吐いた
その場を立ち上がり
剣をベルトに差した
「この森に来るといつもあの夢を見るな」と心で呟きながら、目の前にある石碑を見つめた
「あの時の俺が、もっと力があれば貴女を死なせずにすんだのに、王妃様」
そう呟くと頭を深々と下げた
そうしていると、茂みの中から「シシ」と自分の名を呼ばれた
その方向に目を向ける
「王子女様…」
シシと呼ばれた青年はその女性に対し方膝をつき、ひれ伏した
その行動を見ていた女性がクスクスと笑いながら、「シシ、<王子女様>はやめて、二人きりなんだし、昔みたいにアトレアでいいわよ」
シシはその言葉に、しかし…と困惑した表情を浮かべる
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