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轟々と降り続く雨。
もう、痛みも感じない。
幾度と食らった雷撃により、おれの神経は焼け焦げてしまっている。
アスファルトに埋め込まれた体は、ビクともしない。
両手は最早、完全に炭化してしまった。
『弱いなあ、人間。俺達のこと、なめてんのかァ?』
下卑た笑みを浮かべ、頭上からおれを見下ろす雷神。
その手には雷を操る殺戮兵器、ミョルニル。
ヤツはそれを、おれの腹に振り下ろしてきた。
『「があァァァァァァァッ!!」』
轟音と共に、さらに地面に食い込むおれの体。
大槌から放たれる雷撃、視界を駆け抜ける白光、全身を焦がす電圧、何度受けたとしても、その痛みに慣れる事は無い。
一応嗅覚は残っているらしく、自分の体から肉の焦げた臭いがする。
何も救え無いまま、おれは死ぬのだろうか。
いや、彼女をすくえないまま、おれは死ぬのだろう。
『「それだけは……」』
雷神はさらにミョルニルを振りかぶる。
『「それだけはッ__!!!!」』
上体の力だけでアスフェルトから体を引き抜く。
振り下ろされる雷撃の大鎚、おれは炭屑と化した両腕でそれを受け止める。
木っ端微塵に弾け飛ぶ両腕、しかし、その軌道を逸らすことに成功した。
体の限界など、とうに超えている。
ならば、おれを突き動かすものは何なのか。
『「愚問だ」』
ぶつかり合う視線、構える必殺。
やつは大鎚を引き絞り、おれは右足を大きくしならせる。
『散れェェェェェッ!!!!!
人間ッ!!!!!!!』
『「うおォォォォォォォォッ____!!!!」』
瞬間、おれの全てをかけた崩壊星と、
ヤツの最大のプラズマが交錯した。
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