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簡潔に言おう。おれの体は狂った。
黄金の怪物との戦いの後、平然と2日間を過ごしていたが、その翌日の午後の体育、ソフトボールのときに変化は表れた。
準備体操を終え、おれと天津は肩慣らしに、軽くキャッチボールしていた。
「青斗ー 遠投してえから、思いっきり投げてくれーー」
何球か投げ終わった後、天津は大きく手を振りながら遠くに走っていく。
ちょうど肩も温まってきたころだったので、おれは斜め45度の角度に狙いを定め、思いっきり右腕を振りぬいた。
灰色にくすんだボールは、放物線を描いて天津のグローブに、グローブに……
「え?」
ボールはグングン伸びていく。まるで、メジャーリーガーのホームランボールのように大きな弧を描いていき、そのまま校舎へ。
「「「きゃあああああああ!!」」」
窓ガラスの砕ける音、教室から響いてくる悲鳴。
天津がグローブを落として、呆然と立ち尽くしているのが見える。
そりゃあ、140メートル級の大遠投を見せれば、誰でもそんな反応をするだろう。
その後、幸いけが人も出なかったので、偶然の事故として処理してもらうことになり、大事にいたらなくてすんだ。が、その次の日、またしてもソフトボールの授業。
おれは力を抑えながらも、普通にプレイをしていた。
しかし、満塁、一打逆転サヨナラの場面、この熱い展開に燃えない男はいないだろう。
おれは何も考えず、思いっきりバットを振りぬいてしまった。
伸びる白球、校舎を越える白球、そのまま快晴の空に消えていく白球……
「おれはこの日、伝説となった」
「いやいやいや、んなこと言ってないって」
ため息をつきながら、ベッドに腰を下ろす。
現在、おれは自室でタイプDと話している。
おれは体に起きている異常を彼女に話すため、放課後の部活をサボって帰宅したのだ。
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