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吸血華 吸血華
その身にひそむ 毒の牙
赤い血 探して さまようよ
真っ白な 花嫁さん
ほら お前の
のど元 狙ってる
きれいな姿は 見せかけさ
いつでも お前 喰べようと
するどい 牙 砥いでるよ
真っ白な 花嫁さん
きれいな きれいな 花嫁さん
見て お前の血で
真っ赤に 染まった
仇花 仇花 吸血華
少女は思い出した。歌を。
この世界の誰もが知っているであろう歌。誰かが歌ってくれた歌。
「きゅう、け、つ、か?」
ただの歌だと思っていた。
吸血鬼がいた時代の名残。
誰も吸血華など、見た人はいないはずなのに。
と、少女は朦朧とする意識の中で思う。
周りには、どこからやってきたのか、先程まで一輪しかなかったはずの純白の花が群れをなしていた。
少女から血を得て、真紅に染まる花が増えてゆく。
花が集まって、少女の傷という傷に花弁を押し当てていた。
「あぁ、夢かしら」
今にも消えてしまいそうな視界に、誰か人の足が映った。
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