†prologue†

2/3
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ
「おとなしくしないか! 女」  兵士は強引に女性を掴み、床に投げ出した。 「な、なんということを。私は巫女です。あなたのような野蛮な男が触れていい存在ではない」 「たった今からお前は奴隷なんだよ! 献上される生け贄の分際で!! 口答えするな。この国はな、もう俺たちのモンなんだからよぉ」 「奴隷なんて……いや。助けて、誰か助けて!」  叫び声をあげる女性は腹を殴られて気を失った。 「うるさい女だ。そいつをさっさっと外へ運べ!」  滅びゆく国の大神殿。その一室。  手足の自由を奪われた女性が、兵士たちに担がれて連れ去られていく。  無残に命を奪われた死体が床に転がっていた。何体もの血に染まった亡き骸は目を見開き、すさまじい形相で時を止めている。  室内に生きた人の気配が消えた。だが、依然として神殿内には数多くの敵兵がいる。  遠くで、物が壊れる音、人の叫び声がこだましていた。 「あ、いや。恐い、恐い。宵(よい)ちゃん」 「しいっ。静にして」  小さな、搾り出すような声で注意する。  戸棚の中には、未だ敵兵に発見されていない2人の少女がいた。互いに手を握り合って震えている。
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!