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「行かなくちゃ、暁(あかつき)。ここから逃げないと。またあいつらが戻ってくるかもしれない」
「いや、ここにいる」
「駄目よ。ここは危ないわ」
「ここにいれば見つからないよ。このまま隠れていよう?」
「駄目。ここに私たちを隠してくれたお姉さまも、もう連れて行かれた。あいつらは追ってくる。ここも調べられるわ。中庭にある排水溝は外に繋がっているはずなの。私たちなら、あそこを通って行ける」
「やだ。やだよぉ。行きたくない」
「それでも行くのよ」
「見つかっちゃうよ」
「排水溝まで行ければ、あいつらは追ってこられない。体が大きすぎて入れないから」
まだ幼い彼女らは国の滅亡に巻き込まれ、その身を敵国の奴隷に落とされようとしていた。
生まれ落ちる前から、神託によって巫女とされた2人。
生後、目も開かぬうちから神殿に寄贈された少女たち。
親の顔も知らぬ。神殿の奥深くで、今日まで育ってきた。
真っ白で、汚れのない巫女の服を身に纏った2人の少女は、これまで外に出たことなど一度としてなかった。
「宵ちゃんは怖くないの?」
「怖いよ。怖いに決まってるよ。でもアタシはアンタを守る。暁を守るよ」
「宵ちゃん」
「ついて来てね、暁。離れちゃ駄目」
少女たちは固く繋がれた手をもう一度、強く握り締めた。隠れていた戸棚から出て、夢中で走った。
近づいてくる足音。たくさんの乱暴を働く音。それに反して、甘ったるい声が聞こえた。
「さあ、うさぎ狩りだ。出ておいで~。可愛いうさぎちゃん」
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