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燭台に灯したろうそくが揺らいで消えた。
明かりを失くした部屋は暗闇に包まれ、僅かな光に満ちていた、全ての物を飲み込んでいくかのようだった。
細い三日月も、雲で覆われた深夜。
館の主であるイークウォルは微動だにせず、窓辺に立っていた。固く瞳を閉じている。
瞼の裏に感じていた光の残像が完全に消えてしまうと、瞳を開く。
見つめる先は一寸の闇。
イークウォルは窓の外を見つめていた。
感情の色はない。その凍結された表情からは何も読み取ることができない。そう表現するべきなのだろう。
「人間の臭いがする」
そう一言つぶやいた。
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