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「ばいばーい」
「また来週ねー」
校門の前で繰り広げられる、別れの挨拶。
何処の学校でも起きているであろう光景を、下駄箱の前で見詰める女子生徒が居た。
彼女の名前は青井怜奈。
県立成宮高等学校の一年生だ。
彼女は、何処にでも居る普通の女子高生、とは程遠かった。
何事にも動じず、何事にも冷静に取り組む真面目な性格。
そう言えば聞こえは良いが、実際の所は少し違う。
何に対しても冷めた目で見る。
何に対しても興味が無いのだ。
下らない、が彼女の口癖。
怜奈は靴を取り出し、唐突にその靴を逆さまにする。
靴の中から二、三個の画鋲が落ちてきた。
その画鋲を拾い集め、近くにあった掲示板に突き刺す。
そして上履きを自分の下駄箱に収め、何事も無かった様に下校した。
彼女はいじめを受けていた。
この様な性格は、周りから見れば面白くないらしい。
また、彼女もそれを全く苦にしていない事が、いじめっ子達の神経を逆撫でしていた。
むしろ彼女は楽しんでいた。
変わらぬ日常、変わらぬ日々の僅かな変化。
それがいじめだ。
明日は何をして来るか、それを考えるのが怜奈の密かな楽しみだった。
「もういい加減、画鋲は止めるかな?そろそろ靴を隠したりして。来週は予備の靴を持って行こ」
心からいじめられる事を楽しみ、来週の持参物を決める怜奈は、校門を出て帰路に着いた。
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