変わらない日常

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学校を出て電車に乗り、4つ目の駅から徒歩5分のバス停。 怜奈はそこでバスを待っていた。 途中で寄ったコンビニで買った弁当とお茶は、今日の晩御飯らしい。 怜奈に帰りを待つ者は、これから向かう家には居ない。 父親の暴力が酷く、耐えかねた母親は離婚して自分だけ出て行った。 それから父親と弟、そして当時12歳の怜奈の生活が始まったが、それは長くは続かなかった。 暴力の矛先は怜奈の弟へ及び、ある日投げつけた掃除機は弟の後頭部に直撃した。 徐々に冷たくなり、頭から血を流して動かない弟。 それを見た父親は事の重大さに気付くや否や、自分のした事に恐怖を覚え、包丁で腹部を何度も突き立てた。 息絶えるまで何度も…… その光景を瞬き一つせず見ていた怜奈は、鮮血を流す実の父親と、冷え切って動かない実の弟に囲まれて二日を過ごした。 それまでピクリとも動かなかった怜奈が動き出した理由は、ただ単にトイレに行きたくなったからだ。 トイレから戻ると、倒れて動かない死体を見詰めた。 そして思い出した様な顔をして、近所に住む住人に知らせたのだ。 それから怜奈は小さなアパートを借り、一人で暮らしている。 本来なら、怜奈の保護者に当たる母親に養育義務があるのだが、既に再婚しており、養育を拒否。 施設に送られる寸前で、父方の祖父母と連絡が取れ、現在に至る。
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