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「ククッ、あの小娘も運が悪かったのう」
口振りは同情しているようにも聞こえるが、明らかに面白がっている。
確かに普通の人生なら悪魔に襲われるなんて経験はそうはないだろう。まあ、心霊現象だのUMAだのは大抵悪魔の仕業であって、気付いてないだけなんだが。
しかし、俺がそんなことを考えていると、アイツはその笑みをより意地の悪いものへと変化させた。
「ヌシよ、何か勘違いしておるじゃろう? ワシが言ってるのは悪魔に襲われたのは気の毒、なんてことではないぞ。
命の恩人が、“わざわざ小娘が恐怖を感じるまで事態を放置していた”ド変態だったことよ」
「……気付いてたのか。最後の部分は否定するが」
「ヌシとの付き合いもそれなりに長くなったしのう。それに彼奴を見つけ、彼奴が小娘に襲いかかっても、すぐには手を出さなかったのを真横で見ておったしな。
大方、先程の記憶は消したが、感じた恐怖、そして“希望”は残した。そんなところじゃろう?」
そう言って、アイツは訳知り顔で俺を見た。
……力を使ったことまで見抜かれてるか。
彼女に生きる希望を持たせるためには、あのデカブツを圧倒する必要があった。おそらく、力を使わなければ、俺は苦戦していただろう。
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