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アスファルトの地面が砕かれた衝撃で砂塵が濛濛(もうもう)と舞っている。そのせいで視界は悪い。
一陣の風が吹き、砂塵のカーテンが一気に引かれた。
悪魔が作り出したクレーター、そこには、無惨に押し潰された一対の死体が――
なかった。
『あぁ? どこ行きやがったゴミクズ共がァ!』
獲物を見失った悪魔が怒声をあげる。
「おーい、後ろ後ろ」
男の声が聞こえた。
悪魔が先程までいた場所、女性の目の前に、悪魔と入れ替わるようにして立っていたのは。
殺されたはずの漆黒の男だった。
「い、生きてた……」
女性は男が生きていたことに安堵したが、その事実を理解することに脳が追い付かず、呟いた声は喜びよりも驚愕が勝っていた。
「まあ、あの程度の攻撃、赤子がじゃれついてきたようなもんじゃからのう」
すぐ側でゴスロリ女の声も聞こえる。やや見上げると、塀の上で優雅に足を組みながら座っていた。
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