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「お探しのゴミクズはこれかい?」
悪魔を挟み、女性の反対側から男の声がした。悪魔は、残った左腕で右肩を押さえながら後ろを振り向く。
振り向いた先にいたのは漆黒の男。男は細身に似合わない、巨大なものを片手で持っていた。
それはどす黒い紫色の腕。先程まで悪魔の身体の一部だったものだ。
『てめえェェェェッ!!』
悪魔は傷口から手を放し、そのまま、爪で前方を薙いだ。
爪が当たる直前、また、男の姿が消える。爪は、元々は腕であった肉塊をスライスし、それでも勢いを失わず、悪魔の左側の塀を粉砕した。
「おいおい、トロすぎるんじゃないか?」
男は、今度は悪魔の右肩に乗っていた。
『クソがァッ!!』
悪魔が男にむかって左腕を伸ばす。
「だからトロすぎるんだって」
しかし、悪魔の左腕が男を掴むことはなかった。
男は一瞬で悪魔の前の地面に降り立っていた。
その手に、悪魔の左手首から先を持って。
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