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「あー、壊れちまったよ。お前には“仲間”に対する情とかはないわけ? やるならあっさり殺ってやれば良かったのに」
男は首だけで後ろを振り向き、ゴスロリ女にそう言った。
すると、女は口角を吊り上げ、妖しげに笑う。
「最初にいたぶっていたのはヌシの方じゃろうに。まあ、殺しの許可は得ていなかったしのう。それに『ヌシの場合』は“仲間”にそんなことはせんじゃろう?
あと、そんな醜いだけのデカブツとワシを一緒にするでない」
ゴスロリ女は最後の部分だけは吐き捨てるようにして言った。
男は呆れたように溜め息を一つ吐き、悪魔の方へと向き直る。
「ま、大体はお前の言う通りだけどな。……そろそろ、ラクにしてやるか」
男は目を瞑り、深く息を吸う。
数秒間を開けた後、目を開いた時には軽そうな雰囲気は消え、まるで別人のようであった。
「迷える子羊よ、安らかに眠りたまえ。アーメン」
男は聖職者のように胸の前で十字を切る。
そして、未だに持っていた悪魔の左手を放った。
それは矢のような速度で元の持ち主に向かって飛び、鈍い音を立てて、爪が眉間を貫いた。
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