プロローグ

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女性は先日、交際していた男と別れた。否、捨てられたと言った方が正しいだろう。男は女性の金と身体が目当てだったのだ。 女性は以前にも、交際していた男の二股が発覚し、別れたことがあった。 一度目は勤めていた会社の友人達の励ましもあり、なんとか立ち直ることができた。しかし、二度目はそう簡単にはいかなかった。 ショックを引きずったまま出勤していたため、会社で大きなミスをしてしまったのだ。提携先にまで損害を与えてしまい、女性は勿論クビ。 彼女は彼氏だけでなく、職まで失ってしまった。 クビを宣告された夜、彼女はいくつもの居酒屋を梯子した。 (なんで私ばかりこんな目に会うんだろう……) やけ酒にも疲れ、一人夜道を歩いていて、絶望の淵で彼女はふと思った。 「死ねば、ラクになれるんじゃないかな……」 『じゃあ、いっちょ死んでみるかい?』 「え……?」 独り言に反応する者がいた。彼女は死を求めたが、それは世にもおぞましい声で、救いと言うには程遠かった。 そもそも、この道には自分一人しかいなかったはず。彼女は恐る恐る、背後を振り返った。 振り返った視線の先、そこにいたのは“非日常”の“恐怖”だった。
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