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「おい、そこの姉ちゃん。今の言葉は本心か?」
悪魔が爪を女性に突き立てようとした寸前、男の声が響いた。それは悪魔のものではなく、勿論、女性のものでもない。悪魔は腕を降ろし、辺りを見回した。
『誰だ! どこにいやがる!』
「おーい、後ろ後ろ」
先程と同じ声が聞こえた。その言葉に反応し、悪魔は身体ごと後ろに振り向く。
そこには若い男女の二人組がいた。
男の方は闇のように暗い、真っ黒のロングコートに身を包んでいる。腰から下を覆っているのは背面だけだったが、履いているスラックスのようなものも漆黒であった。黒い革手袋まで身に付けており、全身が黒ずくめである。
唯一、露出している顔も髪は艶のある黒い短髪だ。甘いマスクをしており、軽薄そうな印象を受けるが、双眸は鋭く、危険な光を宿している。見た目から判断すると、歳は二十代の前半ぐらいと思われる。
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