プロローグ

6/16
前へ
/19ページ
次へ
「おい、そこの姉ちゃん。今の言葉は本心か?」 悪魔が爪を女性に突き立てようとした寸前、男の声が響いた。それは悪魔のものではなく、勿論、女性のものでもない。悪魔は腕を降ろし、辺りを見回した。 『誰だ! どこにいやがる!』 「おーい、後ろ後ろ」 先程と同じ声が聞こえた。その言葉に反応し、悪魔は身体ごと後ろに振り向く。 そこには若い男女の二人組がいた。 男の方は闇のように暗い、真っ黒のロングコートに身を包んでいる。腰から下を覆っているのは背面だけだったが、履いているスラックスのようなものも漆黒であった。黒い革手袋まで身に付けており、全身が黒ずくめである。 唯一、露出している顔も髪は艶のある黒い短髪だ。甘いマスクをしており、軽薄そうな印象を受けるが、双眸は鋭く、危険な光を宿している。見た目から判断すると、歳は二十代の前半ぐらいと思われる。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加